龍角散は江戸時代1797年創業の歴史ある老舗企業で、漢方処方に西洋生薬を取り入れて「龍角散」の原型を開発し、一般向けに販売したことが始まりとされています。8代目の藤井氏は経営者としては異色の経歴で、フルート奏者として音楽大学を卒業。製薬会社で経験を積まれた後、龍角散に入社されました。
入社時は、流通対応の遅れや有利子負債拡大などから、倒産の危機に直面。背景にはロングセラー製品の油断やライフスタイルの変化もありました。当時の役員は風邪薬などへの多角化を模索しましたが、業績は悪化する一方。
藤井氏が社長に就任した際は、逆風の中、ノドの自浄作用に特化した商品に絞り、原点に回帰。「製品コンセプトを変更する」という大きな挑戦をされました。また50品目あった製品を4品目に絞り込み、合わせて設備投資を実施。相乗効果の低い事業は撤退することで、現在は鎮咳去痰薬・のど飴のシェアでトップの座を維持しています。 従業員は入社時から変わらず100人のままですが、売上は5倍に、広告費は1億円以下から80億円近くまで投下できるまでに成長を遂げました。
今後の同社について、「次世代が次の時代を見据えて策定すべき」「社長就任後30年以降は事業方針に関わらない」と話す藤井氏。今回は特に事業ポートフォリオの見直しや、商品カテゴリの再考の重要さを学ぶ回となりました。